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 外科医病棟への招待  

万年 六糸坊

(1996.6 初版/2003.3 補筆改定 )
 “しがね〜ギター弾き”の懺悔的連続小説

 


  (一)プロローグ

四月のある日、例年ならクロッカスやスイセンやチューリップなどの芽が眩しく新緑が心楽しい頃になっても、まだフラワーガーデンには1メートルほどの雪がうず高く残っており、二〜三日前からの名残の寒波は夜になると一層厳しくなったように感じられた。
連日知人のいるS文化企画事務所のパソコンを借り『これを完成させれば、著述家の仲間入りができるかも知れない・・・』なんてアマ〜イ考えを巡らせていた“しがね〜えギター弾き”は、その日も自分の半生・・・?・・・反省かも知れない!・・・に培った、極めてわい雑なる精神を傾けた「北海道面白川名散歩」の推敲をしておりました。『こんな本業でもないことにこれほど自然に入り込めるのは、やっぱりオノレは天才的オバカなんだよな〜』とと思いつつ、オカネナイ川の項まで目を通すと『これはオレのこと・・・?・・・かも知れない・・・! でもお金の要らないヤツは、決してお金がナイなんて愚痴はイワナイ川・・・?』とか訳の解らないことを考えながら
「今日はこれまでかな・・・」
とつぶやくと、何か得体の知れない強大な力に引き寄せられるかのように、ネオンまたたくススキノの雑踏を軽快に(!)・・・そうです、まるで昼間とは別人のような軽やかな足どりで・・・歩いておりました。そうなんです。そのS文化企画事務所は、全国に名を馳せた“ナ・ナ・ナント・ススキノ”のほぼ中央に位置していたのであります。S文化企画事務所から歩いて数分のところにある行きつけのバーのドアーを引くと、いつものように数人の常連が、いつものように通夜の身内のような静けさでグラスを傾けていたが、まるで誰かを待ってでもいたかのように一斉に彼を確認すると、いつものように笑顔を作って次々とバーを出て行ってしまった。皆、彼のことを嫌っているという訳ではなかったが、彼をススキノに吸い寄せる強大な力と同じ原理で、彼には他の客をにこやかに帰してしまう“万有放力”とでも言えそうな不思議な力があったのです。
「ま〜た二人っきりだよね〜マスター・・・」
「えっへっへっへ・・・だけど、男二人ってゆったってナニする訳でもないですから、ゆっくりしてってください・・・」
「・・・・・・」
いつものように、何やら心地よい不気味さに背中をゾクゾクとさせながら、その日に限って彼は二杯目の水割りを飲み干すと
「たま〜に早く帰ってみるかな〜」
と、客がいなくなってしまうことの言い訳をするようにつぶやいてバーを出た。
(続)

注)北海道の川名には○○ナイ(内)とカタカナ(漢字)表記されるものが多い。オカネナイ川とイワナイ川は実在する川名で、後日「北海道面白川名散歩」と題して連載を始めます。

 

外科医病棟への招待

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「八ヶ月の金持ち」